
グローバル化やデジタルシフト、新型コロナウイルスなどによって、企業を取り巻く環境は急激に変化をしています。そんな中、ビジネスを持続させていくために活用したいのが補助金や助成金といった支援制度です。補助金も助成金も似たような印象を受けると思いますが、実は審査の有無という違いがあり、実施主体も補助金は経済産業省、助成金は厚生労働省になります。
補助金は要件を満たした企業や個人事業者が申請しても、すべて採択されるわけではありません。実施主体による審査が行われ、採択されるかどうかが決まります。事業の目的や必要性がきちんと伝わるような申請書類を作ることが大切です。
これに対して、助成金は要件を満たしている限り、申請すれば基本的に支給されます。書類も細かく作成する必要はありませんが、補助金に比べると金額が少ないケースが多いです。ここでは企業にとって、メリットの大きい5つの補助金を紹介します。
■ものづくり補助金
正式には「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」と言い、働き方改革や賃上げなどの課題に対応するために革新的サービス開発や試作品開発、生産プロセス改善を行う設備投資等を支援する制度です。計画期間中の付加価値額が年率3.0%以上増える事業計画の策定が条件で、補助率は2分の1もしくは3分の2、補助額は上限が750万円~5,000万円(補助率、補助額は申請する枠、類型や従業員の人数によって異なります)。補助対象が設備だけではなく、試作品開発に必要な原材料費まで含まれている点が、ものづくり補助金の大きな特徴です。
補助の対象となる経費

ものづくり補助金 『公募要領(15次締切分)概要版』より
2023年度は賃上げで補助金が上乗せされ、グローバル市場開拓枠の補助下限額が100万円に下がり、小規模の設備・システム投資も対象になりました。23年1月の第14次公募から、グローバル市場開拓枠において、海外市場開拓(JAPANブランド)類型の新規輸出1万者支援プログラムへの事前登録が加点になりました。
■IT導入補助金
業務効率化・売上アップのためのITツール導入を補助することを目的とした補助金です。補助額は導入にかかった費用の2分の1、最大450万円が基本ですが、補助率が最大4分の3になる特別類型もあります。
対象になるITツールはIT導入補助金事業に登録されているITツールのみで、ITツールであれば何でもよいわけではありません。補助対象は、生産性向上を図ることを目的とした通常枠(A・B類型)、サイバーセキュリティ対策の強化を目的としたセキュリティ対策推進枠、生産性向上とともに、インボイス制度への対応も見据えつつ、企業間取引のデジタル化を強力に推進するためのデジタル化基盤導入枠の3つに分けられます。各枠の補助額の下限・上限、補助率は下の表の通りです。

IT導入補助金2023 事業概要より
■事業承継・引き継ぎ補助金
事業承継・引き継ぎ補助金は、中小企業・小規模事業者の事業承継やM&Aなどを支援するもので、①経営革新事業②専門家活用事業③廃業・再チャレンジ事業の3つがあります。
経営革新類型は承継後の取り組みにかかる費用を補助し、創業支援型・経営者交代型・M&A型の3つのタイプがあります。
専門家活用類型は仲介業者の手数料などM&Aにかかる費用を支援します。会社の売り手・買い手どちらも対象になりますが、仲介業者の費用は、M&A支援機関登録制度に登録された業者による支援費用だけが対象です。
廃業・再チャレンジ類型は、M&Aが成約せずに廃業になってしまったり、承継時に事業の一部を廃業したりする場合に、廃業登記費・在庫処分費・解体費・原状回復費などを補助します。
23年度から賃上げによる上乗せと共に、後継者が5 年後の事業年度末までに事業承継を完了する予定でも補助金の対象となりました。

ミラサポplus 中小企業庁担当者に聞く「事業承継・引継ぎ補助金」より
■事業再構築補助金
事業再構築補助金は、ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するための新市場進出(新分野展開、業態転換)や、事業・業種転換、事業再編、国内回帰を支援するための補助金です。成長枠、グリーン成長枠、卒業促進枠、大規模賃金引上促進枠、産業構造転換枠、サプライチェーン強靱化枠、最低賃金枠および物価高騰対策・回復再生応援枠の8つの事業類型があります。また、支援の対象となる事業再構築は「新市場進出(新分野展開、業態転換)」、「事業転換」、「業種転換」、「事業再編」、「国内回帰」を指します。

事業再構築補助金 公募要領より
認定経営革新等支援機関と、補助事業終了後に付加価値額の年率平均3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定して、申請し、採択を受け、事業再構築に取り組みます。
■ESGリース促進事業 補助金制度
ESGリース促進事業 補助金制度は、企業や個人事業者が熱源設備、産業用機械、建設機械などで、環境省が定める基準を満たす脱炭素機器をリースで導入した場合に、契約期間の総リース料(消費税および再リース料を除く)の4%以下の補助金を指定リース事業者に交付する制度です。

一般社団法人環境金融支援機構 ESGリース促進事業
指定リース事業者向詳細説明会資料より
適格要件は、サプライチェ-ン全体で脱炭素化に向けた取り組みが行われており、大企業等からの要請、支援を受け、サプライチェーン内の中小企業等が脱炭素化の取り組みを行っていること。もしくは脱炭素化に向けた自主目標を設定し、その達成に向けて取り組み、サプライチェーンの脱炭素化に自主的に貢献していることです。さらにパリ協定に整合する具体的目標に向けて取り組んでいる場合には優良な取り組みとして、加点要件になります。
補助金申請は環境省から指定を受けた指定リース事業者が行いますので、導入する企業や個人事業者では補助金申請の手続きは必要ありません。
補助金は指定リース事業者に交付されますが、リース契約時に補助金全額をリース料低減に充当するという内容の特約を交わすことで、リース導入事業者がこの制度のメリットを受けられる仕組みになっています。

一般社団法人環境金融支援機構 ESGリース促進事業
指定リース事業者向詳細説明会資料より
今回ご紹介した補助金について、ページ下の「もっと知りたい」をクリックしていただけるとさらに詳しい情報をご覧いただけます。
記事は2023年7月26日現在の情報となります。最新情報は各ホームページにてご確認ください。
(取材・文:菊地原博/監修:税理士法人 アーク&パートナーズ 中小企業診断士 椎名香澄)