
前回、固定資産の分類と管理の必要性についてご案内しました。今回は、その必要な管理の方法についてご紹介します。
固定資産の管理①
固定資産管理の始め方
実際に固定資産の管理を行うには、何をすればよいのでしょうか。
この項では、これから固定資産の管理を始めるという方向けに、固定資産の管理方法を紹介します。
固定資産の管理をはじめて行う場合、大きく以下の手順で作業を進めていくことになります。まずは流れを押さえてください。
- 固定資産管理台帳の作成
- 固定資産の棚卸し
- 固定資産管理ラベルの貼付
- 固定資産管理ルールの策定
それぞれ詳細に解説していきます。
1.固定資産管理台帳の作成
固定資産管理の要は管理台帳です。ありとあらゆる固定資産の情報は、すべてこの固定資産管理台帳に集約されることになります。
すでに社内に管理台帳があるのであれば、それを使いましょう。なければ、新たに作成する必要があります。
ここで注意すべきは、会社によって、「会計上の管理」だけを行う目的で作られた固定資産管理台帳しかない場合があるということ。「償却資産台帳」などと呼ばれることもあります。
「固定資産の管理とは」の項で説明したように、固定資産管理には「会計上の管理」と「現物の物品管理」の2つの要素があり、両方の側面から管理を実施してこそ大きなメリットを得られます。
したがって、もし社内にある管理台帳が「会計上の管理」に特化したものであれば、「物品管理」にも使える管理台帳を新たに作成するようにしましょう。
管理のための専用のシステムを利用せずに管理台帳を作成する場合には、Excelなどの表計算ツールが使われることが多いようです。「固定資産管理番号」「固定資産名」「取得日」「取得金額」など、必要に応じて項目を立て、情報を入力できるようにしておきます。
台帳のフォーマットを作成したら、誰でもいつでもアクセスできるように全社的に共有できるクラウド上に保存してください。
これまで固定資産管理が部門や個人に任されていた場合は要注意です。管理体制がブラックボックス化されていて、全体を把握ができなくなる危険があります。
そういうことがないよう、誰でもアクセスできるところに保存しましょう。
2.固定資産の棚卸し
次に、いま会社が実際に保有している固定資産を把握するための「棚卸し」を実施しましょう。
台帳に記載されている通りに現物が管理されているかを確認する作業が「棚卸し」ですが、ここでの「棚卸し」は、作成した台帳のフォーマットに各固定資産の情報を登録するための作業になります。
現物を確認しながら、名称や型番、取得金額、取得年月日、管理部門、責任者などを把握し、台帳に入力していきましょう。
3.固定資産管理ラベルの貼付
管理台帳への入力とあわせて、管理ラベルの貼付を行っていきます。
管理ラベルは、個々の固定資産を判別するために固定資産管理番号を記載したラベルで、個々の固定資産に直接貼り付けたり、吊るしたりして使用します。管理番号のほか、必要に応じて取得日や保管場所などいくつかの予備情報を記載しておくと便利です。
管理ラベルを自作したいのであれば、もっとも手軽なラベルプリンターで作成する方法を試してみてください。台帳を見ながら、管理番号を印字して、貼り付けるだけでOK。簡単ですね。
ただし、管理する固定資産の数が多かったり、固定資産が置かれている場所が複数あったりする会社では、このやり方はお勧めできません。というのも、棚卸しの作業を考えた場合、この手の管理ラベルでは、結局、目視でラベルを確認しながら管理台帳と照合していかなければならず、作業にかかる手間は、管理ラベルを貼らない場合と同じくらいかかってしまうからです。
4.固定資産管理ルールの策定
最後に、固定資産管理のルール(規定)を作ってください。
台帳を作成し、管理ラベルを貼っただけでは固定資産を管理していることにはなりません。仕組みとして機能するかたちになっていなければ意味がないのです。
固定資産管理を仕組みとして機能させるためには、固定資産を管理するためのルール、ガイドラインが必要です。このガイドラインを、現場スタッフから経理担当者まで、すべてのスタッフの共通認識として理解できるようにすることで、仕組みとして機能するようになります。
特に固定資産の取得や廃棄については、最低限のルールを作り、周知しておきましょう。
POINT
- 固定資産管理の始め方は、台帳作成→棚卸し→ラベル貼付→ルール策定の4段階
- 固定資産管理が仕組みとして機能するよう、運用の工夫をすることが重要
固定資産の管理方法②
固定資産の管理業務の内容
前項では、固定資産管理の始め方について説明しました。
では、管理をスタートした後は何もしなくてよいのでしょうか。
もちろん、そんなことはありません。
固定資産管理は、一度始めると定期的に作業が発生します。以下が、運用フェーズにおける固定資産の管理業務の内容です。
1.発注
購入金額などを基準に承認を得て、物品を発注します。
2.検収
発注書・納品書・現物を照合します。
3.台帳登録
固定資産管理台帳に、取得資産を登録します。後で資産を特定しやすいように、管理部署、所在場所、資産の種類などを詳細に記載していきます。
4.管理番号付与
固定資産管理番号を記したシールなどを、固定資産に貼付します。
5.実査
固定資産が置かれている現場に行き、帳簿上の記載と実態が合っているか否かを調査します。通常、毎年1~2回、定期的に実施します。
6.保険・修復
修復した場合と買い替えた場合のコストを比較し、保険を付保するか否かを検討します。
基本的にはこの流れをひたすら繰り返すのみ。地味な作業ではありますが、時間と手間がかかる作業であることが分かると思います。
固定資産管理システムとは?
ここまで、固定資産とは何か、なぜ管理が必要なのか、どうやって管理していくのか…… ということについて説明してきました。
読んでいただいた方には理解いただけると思うのですが、固定資産の管理はとにかく手間と時間がかかり、かつ地味で面倒な作業である、ということです。
しかし固定資産の管理を一切しない状態で会社を経営していくことはできません。会社は固定資産の管理から逃れることはできないのです。
では、もっとラクに、手間をかけずに固定資産を管理できないか。そんな要望を叶えてくれるのが、固定資産管理システムです。固定資産管理システムを導入すれば、たとえば台帳作成や棚卸し作業を自動化したり、台帳の機能を拡充したりすることができてしまいます。
ただし、システムを導入するにあたって注意しなければならないことがあります。
それは、一般的な固定資産管理システムでは「会計上の管理」しかできない場合が多いということ。前項でも説明したように、固定資産管理は「会計上の管理」と「物品管理」の両面からアプローチしなければ、最大限のメリットを得ることはできません。
「物品管理」に特化したシステムを使うことで、管理ラベルの発行や現物の確認(実査)作業を効率化することができます。現在、物品管理業務に手間がかかっているという方は、物品管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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