
「売上高100億円」。この数字は、単なる目標ではありません。企業の成長を加速させ、地域経済を活性化し、日本全体に新たな活力をもたらす可能性を秘めた、未来への宣言です。
2025年6月17日より公表を開始した「100億宣言」。開始から半年を迎えようとする今、本制度を開始した背景や想い、内容について、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)で、「100億宣言」の推進を担う梅田博昭氏にお話をお聞きしました。
なぜ今、「100億宣言」なのか
構造的な人手不足、30年ぶりの賃上げ水準、原材料費等の上昇、金利上昇など、マクロ環境の変化に中小企業が対応していくためには、今まで以上に「経営力」を高め、経営基盤を充実させ、稼ぎ、さらに成長する必要があると梅田氏は言います。
そんな今だからこそ、前向きな設備投資や人材確保に踏み出そうとする中小企業を日本全体で後押しするため「100億宣言」制度が始まりました。
中小企業庁の研究会での調査分析によると、売上高100億円を超える企業は、良質な雇用や海外を含む域外の需要獲得に優位性があり、地域経済を牽引していること、またこのような企業が国内において三大都市圏に偏っていることが報告されています。100億円を超える企業が、日本全国に生まれていくことが、日本経済に大きなインパクトを与えるのです。
また、100億円を達成した企業経営者からは、「200億円、300億円の達成より、100億円の達成までが長く、困難だった」という声がよく聞かれます。成長を目指す中小企業が、まず目指す目標として、そして、そういった中小企業を日本全体で応援していくために、誰にでも分かりやすい指標として「100億円」という数字が設定されました。
出典:中小企業の成長経営の実現に向けた研究会 第2次中間報告書(独立行政法人中小企業基盤整備機構 作成資料)
地方から日本を変える——「100億企業」を全国に
図にもある通り、実際に売上高100億円を超える企業は、1人当たりの人件費が約1.4倍、直接輸出額は約10倍弱と、日本経済・地域経済に大きなインパクトを与えていることが分かります。
現在、100億円を超える企業の多くは東京・大阪・愛知などの都市圏に集中しています。しかし、日本経済全体がさらに発展するためには、地域での100億企業創出も重要です。100億企業が地域で生まれることで、雇用が生まれ、若者が地元に残り(戻り)、地域経済が活性化する。これは、政府が掲げる「地方創生」の実現にも直結する取り組みです。
独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)
企画部成長企業支援室 室長代理 梅田 博昭 氏
「100億宣言」までのステップ
「100億宣言」は、中小機構が運営する「100億企業成長ポータルサイト」から申請できます。主な要件は以下の通りです。
- 直近の売上高が10億円以上100億円未満
- 高い成長を会社としてコミットしていること
- 「100億企業成長ポータルサイト」への掲載
宣言にあたっての特別な審査はなく、要件を満たせば誰でも申請可能で、グループ企業での申請も可能です。
宣言によって得られるメリットと中小機構の支援
大きく3つのメリットがあると梅田氏は言います。
- 1. 経営戦略の明確化と発信力の強化
- 経営者自身が「我が社は今後どうありたいのか」を深く考えるきっかけになるとともに、宣言した内容は、専用のポータルサイトで公表されるので、社内外へのアピールに繋がります。企業理念や経営者のメッセージを発信することで、成長に向けた明確なビジョンを示すことができます。
- 2. 従業員のモチベーション向上
- 会社の目指す方向性が明確になることで、従業員の意識が変わり、日々の業務に主体性と前向きな緊張感が生まれるという効果が期待できます。
- 3. 意欲的な経営者とのネットワーク形成
- 「100億宣言」をした企業を対象としたシンポジウムや経営者ネットワークなど、業種や地域を超えた交流の場が提供され、成長を目指す意欲的な経営者(仲間)と出会うことができます。
また、以下のような支援が用意されているとのことです。
- 最大5億円の補助(※)
- 工場や物流拠点の新設・増設、生産性向上を目指した大規模な設備投資に活用できる中小企業成長加速化補助金を申請できます。同補助金の補助上限額は最大5億円(※)と中小企業向けの他補助金と比べて非常に大きく、補助率も2分の1(※)です
- 税制優遇
- 認定計画に基づく設備投資については、即時償却や税額控除が適用されるので、税制面での優遇措置が受けられます。
- 中小機構による伴走支援
- 企業の成長フェーズに合わせた経営課題解決の支援や情報提供など、中長期的に伴走し、売上高100億円の実現に向け支援。ニーズの高い「海外展開」「M&A・新市場開拓」「人材確保・育成」など専門的な支援メニューも充実しています。
※補助上限額や補助率については第1回公募時の要件です。最新の公募情報や要件はこちらをご確認ください
※中小機構の支援内容詳細についてはこちら
壁を越える企業の共通点
「10億の壁」「30億の壁」など、成長の過程にはいくつもの転換点があります。これを乗り越えてきた企業は、課題を予測し、長期的な視点で事業価値を高める取り組みを継続してきたという共通点があると梅田氏は言います。
例えば、価格競争に陥り利益率の低下に直面した企業が、顧客や製品の絞り込み、ブランディングを徹底することで利益率、そして売上を向上させた事例。また、国内市場の飽和を見越し、時間をかけて海外展開の準備を進め、国内外で売上を伸ばした事例もあります。
こうした取り組みは一朝一夕では実現できません。「100億宣言」は、10年という長期スパンで成長戦略を検討するきっかけとして最適です。(梅田氏)
宣言で企業が変わる——すでに動き出している企業たち
制度開始から間もないにもかかわらず、すでに多くの企業が宣言を行い、社内外に成長の意思を示しています(2025年11月現在で2,000を超える宣言を公表)。
例えば、岐阜県のある製造業では「賃上げを必ず行う」と宣言したことで、従業員が自発的にスキルアップに取り組み、会社全体が活性化するという好循環が生まれていると言います。
また、2025年10月7日に宣言企業だけが参加できる経営者ネットワークの第1回を開催しました(「100億企業創出シンポジウム」の第2部として実施)。全国から100名もの経営者が集い、攻める事業領域、M&Aや高度人材確保・育成など飛躍的成長に向けた取組みを真剣に学び合うなど積極的に交流する姿が印象的でした。(梅田氏)
※シンポジウムの詳細についてはこちらよりご確認いただけます
(取材・文:町田 知陽(株式会社PLAN-Bマーケティングパートナーズ)/取材協力:梅田 博昭 氏(独立行政法人中小企業基盤整備機構 ))
売上高100億を目指す企業の皆さまへ‐‐三菱HCキャピタルグループのサポート
売上高100億円という目標達成の過程では既存事業の拡大や新規事業の開発などに伴い、設備の新規導入や入替え更新なども発生します。
「事業拡大のため新しい設備を導入したいが、一括購入は負担が大きい」「老朽化した設備を入れ替えて効率化したいが、廃棄費用がかさむ」「省エネ設備にして環境負荷を改善したいが、補助金は活用できないか。」「販路拡大したいが、どうしたら良いか分からない」など、多様な課題に直面することがあると思います。
私たち、三菱HCキャピタルグループではリースを含めたファイナンスのご提供はもちろん、多様な業種・業態のお客さまとのお取引実績からさまざまなサービスをご用意しています。
お客さまの挑戦と成長をサポートするためのサービスをご案内いたします。ぜひご相談ください。
